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東京高等裁判所 平成5年(ラ)456号 決定

主文

本件各抗告をいずれも棄却する。

抗告費用は抗告人らの負担とする。

理由

一  抗告の趣旨は、「原決定を取り消す、相手方の売却のための保全処分(民事執行法五五条二項)の申立てを却下する。」というのであり、その理由は、別紙抗告の理由のとおりである。

二  当裁判所の判断

1  当裁判所も相手方の売却のための保全処分(民事執行法五五条二項)の申立ては理由があると判断するものであり、その理由は、原決定の理由説示のとおりであるからこれを引用する。

2  抗告の理由第二点及び第三点について、若干敷衍すると、一件記録によれば、抗告人らの主張する賃借権は、いわゆる執行妨害を目的とした濫用的短期賃借権と推認され、民事執行手続においてはその効力を認めるに由ないから、抗告人らは、右手続においては、無権原占有者と同視すべきである。

そして、差押えの目的物件について使用収益する権利を有する債務者に対して売却のための保全処分を命ずることができる以上、無権原占有者に対しても、同様の保全処分を命ずることができると解すべきであるから、抗告人らは、右処分の相手方となり得るのであり、抗告人らを相手方として右処分を命じた原決定には、なんらの違法もない。

3  よつて、これと同旨の原決定は正当であり、本件各抗告はいずれも理由がないから棄却し、抗告費用の負担について、民訴法九五条、八九条、九三条を適用して、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 並木 茂 裁判官 高柳輝雄 裁判官 中村直文)

《当事者》

抗告人 有限会社 甲野

右代表者代表取締役 乙山花子

抗告人 株式会社 丙川

右代表者代表取締役 丁原太郎

抗告人 株式会社 戊田

右代表者代表取締役 甲田春夫

右三名抗告代理人弁護士 高橋むつき

相手方 株式会社 乙日

右代表者代表取締役 丙田松夫

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